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内部監査における職務分掌について。意義や分掌設計方法、実施方法から評価の観点まで徹底解説

目次

  1. 職務分掌の概念と内部監査における意義

  2. 内部監査部門における分掌設計と責任構造

  3. セグリゲーションとの補完的役割と監査対象範囲

  4. 職務分掌に関する監査手続と統制評価

    • 4-1. 分掌規程の設計評価

    • 4-2. 実態との整合性検証

    • 4-3. 分掌不備に起因するリスクの識別

  5. 情報システム統制における分掌評価の観点

  6. グループ会社・海外拠点における職務分掌の監査上の留意点

  7. 職務分掌の監査所見と是正措置フォローアップ

  8. 職務分掌の有効性に関する成熟度評価モデル

  9. 総括:職務分掌を軸とした統制強化と監査の貢献


職務分掌の概念と内部監査における意義

職務分掌とは、業務遂行における責任と権限を明確化することで、組織全体の統制環境を強化し、不正・誤謬のリスクを抑制する制度的枠組みである。

内部監査においては、この職務分掌が実効的に機能しているかを評価することで、ガバナンス・リスクマネジメント・コンプライアンスの有効性を検証することができる。分掌の不備は、業務の属人化やリスクの見逃し、権限逸脱などの原因となるため、監査対象としての重要性は極めて高い。


内部監査部門における分掌設計と責任構造

内部監査部門においても、職務分掌は不可欠である。例えば、監査計画の立案、現地調査の実施、監査報告の作成、フォローアップなど各工程において、担当者・レビューア・責任者の区分を明確にする必要がある。これにより、監査プロセス自体の客観性・信頼性が担保され、監査品質の安定化が図られる。さらに、監査役会・経営層との責任分界も明文化し、ガバナンス上の役割分担を明確にしておくことが望まれる。


セグリゲーションとの補完的役割と監査対象範囲

職務分掌とセグリゲーション(SoD)は内部統制の車の両輪である。内部監査では、SoDの不備による不正リスクや業務牽制不足を指摘することがあるが、職務分掌の視点では、その制度設計自体が不整合である場合も対象とする必要がある。監査では、職責の不一致、意思決定と実行の集中、代替者不在によるボトルネックなど、統制不備の要因を可視化することが重要である。


職務分掌に関する監査手続と統制評価

1. 分掌規程の設計評価

内部監査では、まず職務分掌規程の整備状況、文書化水準、最新性を評価する。業務フローに対応して権限と責任が整合的に設計されているか、業務分掌との齟齬がないかを確認する。


2. 実態との整合性検証

文書と現場運用に乖離がないかを検証するため、ヒアリング、現地観察、業務記録の突合などを実施する。役職の不一致、職務範囲の逸脱、兼務状況などに注目する。


3. 分掌不備に起因するリスクの識別

分掌の不備が原因で発生したインシデント・トラブル・業務遅延等があれば、その再発防止策としての統制強化を提案する。特に、属人的業務やワンマン承認プロセスには注意を要する。

職務分掌に関する監査手続と統制評価

情報システム統制における分掌評価の観点

システムアクセス権限、マスターデータ管理、ログ監査などにおいて、分掌とセグリゲーションの整合が図られているかを検証する。特にIT統制上の「運用・開発・承認」機能の分離、ベンダー委託時の責任分界、クラウド環境下でのアクセス制御体制の適正性が論点となる。


グループ会社・海外拠点における職務分掌の監査上の留意点

グループガバナンスにおける親子会社間の職責分担、海外子会社におけるローカル人事体制との整合、文化的背景による裁量権限の違いなどを考慮する必要がある。国際監査基準に沿った分掌設計と現地運用の整合性も評価対象となる。


職務分掌の監査所見と是正措置フォローアップ

監査結果として、分掌不備の特定とともに、具体的な是正措置(業務マニュアルの改訂、権限階層の見直し、責任者任命の明確化など)を提示する。フォローアップでは、是正措置の実行状況と実効性の検証を実施し、必要に応じて第二次監査を行う。


職務分掌の有効性に関する成熟度評価モデル

内部監査における分掌の評価を定量化するために、整備度、更新頻度、運用遵守率、監査指摘是正率などの指標を活用し、成熟度モデル(例:初期→整備→最適化→自律化)を適用することが有効である。これにより、職務分掌が単なる制度ではなく、統制文化の一部として定着しているかを評価できる。


総括:職務分掌を軸とした統制強化と監査の貢献

職務分掌は、統制環境の礎として、内部監査が重点的に取り扱うべきテーマである。監査により、制度設計と現場運用のギャップを可視化し、是正指導を行うことで、組織全体のガバナンス・透明性・業務効率性を飛躍的に向上させることが可能である。今後の監査活動においては、職務分掌を戦略的リスクマネジメントの一環として捉え、内部統制の高度化に寄与すべきである。

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