【2025年版】内部監査におけるコンサルティング活用の重要性と成功事例
- 敏行 鎌田
- 3月5日
- 読了時間: 5分
はじめに – 内部監査の高度化に求められる外部支援の役割
近年、企業のガバナンス強化やリスクマネジメントの高度化が求められる中、内部監査部門の役割は拡大し続けています。財務報告の信頼性確保にとどまらず、業務の適正性評価、不正リスク管理、データ分析監査など、求められる専門性が多岐にわたるようになっています。
しかし、多くの企業にとって、社内リソースだけで内部監査の高度化を進めることは容易ではありません。そのため、外部のコンサルティング会社や監査法人と協力し、専門知識や先端技術を活用する動きが広がっています。
特に、新規上場(IPO)を目指す企業では、J-SOX対応を含む内部統制整備が不可欠であり、またデータ分析やIT監査の導入においても外部パートナーの支援が有効です。本記事では、内部監査にコンサルティングを活用して成功を収めた企業の事例を紹介し、企業がどのようにして監査業務を強化できるかを探ります。
ケーススタディ①:レジル株式会社 – IPO準備と内部監査体制構築の成功事例
背景と課題:IPOに向けた内部管理体制整備と人材不足
レジル株式会社(エネルギーテック企業)は、事業拡大と資金調達を目的にIPO(東証グロース市場上場)を目指しました。しかし、上場審査を突破するには、適切な内部統制・内部監査体制の整備が求められます。証券会社や監査法人からも、業務記述書・リスクコントロールマトリックス(RCM)・フローチャートの整備や、内部統制評価の実施などが求められました。
しかし、社内の内部監査担当者は1名のみで、ノウハウ不足やリソースの制約により、自社だけでの対応は困難でした。さらに、IPO準備期間中に内部監査責任者が交代するという予期せぬ事態も発生し、監査の継続性確保が大きな課題となりました。
施策:コンサルティングの活用による内部監査・J-SOX体制構築
レジル社は、ブリッジコンサルティンググループ(BCG)と提携し、内部監査業務とJ-SOX対応業務のアウトソーシングを決定。BCGは「伴走型コンサルティング」として、社内チームと一体となりながら内部監査の計画策定、リスク評価、規程整備を支援しました。
また、内部監査の一部を外部委託しながら、段階的に社内での監査対応力を高める「コソーシング(協業型アウトソース)」の形態を取り、最終的には社内で自走できる監査体制を構築しました。
成果と成功要因:外部支援の活用による上場審査の突破
その結果、レジル社は2024年4月に東証グロース市場へ上場。監査法人や証券会社からの評価も高く、内部監査の体制が強固であることが審査の通過に大きく寄与しました。
成功要因としては、
外部専門家を適切に活用し、IPO準備を効率化したこと
アウトソーシングの範囲を柔軟に設定し、必要な部分のみを外部支援としたこと
社内にノウハウを蓄積し、長期的な監査体制の確立に繋げたこと が挙げられます。
ケーススタディ②:東レ株式会社 – データ分析導入による内部監査の変革
背景と課題:不適切事案発覚と従来手法の限界
世界的な素材メーカーである東レ株式会社では、2015年に特定の事業部門で不適切な発注が発覚しました。内部監査では伝統的な抜き取り検査による監査が行われていましたが、不正の兆候を事前に検知できていませんでした。
この問題を受け、経営陣から「他の部門にも類似の不正がないか」を短期間で調査するよう指示がありましたが、数十万件に及ぶ取引データを手作業で検証することは現実的ではありませんでした。
施策:プロティビティ社の支援によるデータ分析監査の導入
東レは、リスクコンサルティング会社であるプロティビティ社と協力し、データ分析技術(CAAT:Computer Assisted Audit Techniques)を用いた監査体制を導入しました。
具体的には、SAPに蓄積された財務データを一括抽出し、「異常な取引」「特定の業者への高額支出」「不審な経費処理」など、リスクの高いシナリオに基づく分析を実施しました。
成果と成功要因:不正抑止とノウハウの蓄積
データ分析の結果、不正事案の再発防止が実現しただけでなく、監査プロセス自体が高度化しました。現在では、東レ社内の財務データを四半期ごとにモニタリングする仕組みが確立され、グループ全体のリスク管理が強化されています。
この事例の成功要因は、
データ分析を活用した監査アプローチの変革
外部支援による迅速な監査体制の構築
監査部門のスキル向上とノウハウの蓄積 の3点です。
おわりに – 内部監査強化に向けたポイント
本記事では、内部監査の高度化に成功した4つの企業の事例を紹介しました。各事例から得られる重要な示唆をまとめると、以下のようになります。
明確な監査目的の設定
IPO準備、不正対策、グローバル監査など、具体的な目標を持つことで、必要なリソースと支援を適切に活用できる。
外部専門家との協力
内部監査に関する高度な知見を持つコンサルティング会社や監査法人を活用することで、短期間で効率的な監査体制を確立できる。
データ分析の活用
伝統的な手法にとどまらず、データ分析を活用することで、監査の網羅性と精度を向上させることが可能。
監査の継続的改善
コンサルの活用は一時的な対応ではなく、社内にノウハウを蓄積し、継続的な監査強化へとつなげることが重要。

内部監査は単なるチェック機能にとどまらず、企業の成長を支える重要な戦略機能となっています。今後の監査業務の高度化に向けて、本記事の事例を参考に、自社の監査体制を見直してみてはいかがでしょうか。
参照元
Bridge Consulting Group(https://bridge-group.co.jp/)
Protiviti(https://www.protiviti.com/)







