内部監査ツールとは?おすすめ5選の選び方から注意点まで徹底解説。
- 敏行 鎌田
- 6月9日
- 読了時間: 9分
内部監査は、企業のガバナンスやリスク管理、コンプライアンスを強化するための重要なプロセスです。近年、これらの業務を効率的かつ効果的に行うためのツールやソフトウェアが多数登場しています。本記事では、内部監査に役立つツールの選び方やおすすめのソフトウェア、導入のメリット・デメリットなどを詳しく解説します。
目次
内部監査ツールとは
内部監査ツールとは、企業が内部監査業務を効率化し、リスク管理やコンプライアンス強化をサポートするために利用するソフトウェアやシステムのことです。内部監査ツールは監査計画の策定からデータ収集と分析、監査レポートの作成など、内部監査に必要なプロセスをサポートする機能を備えています。
内部監査ツール導入の目的
内部監査ツールを導入することで下記を実現できます。
業務の効率化
監査プロセスの自動化により、作業負担を軽減し、人的エラーを減らします。
データの一元管理
監査に関連するデータや証跡を一元的に管理し、迅速なアクセスを可能にします。
コンプライアンス対応
各国の法規制や業界基準への適合状況を継続的に監視する機能を提供します。
リスク管理の強化
潜在的なリスクを可視化し、事前に対応策を講じることで企業の安定性を向上させます。

内部監査ツールの種類
内部監査ツールには、大きく分けて2つあります。
一般的なGRCツール
リスク管理やコンプライアンス対応を中心に設計された多機能なツールで、内部監査機能も含まれています。ただし、監査に特化していないため、実務には使いづらい場合があります。特に海外製のGRCは日本の業務慣習に合わず、必要以上に複雑で、結果として“使われない”ケースも少なくありません。また、導入や運用にかかるコストも高額になりがちです。
内部監査特化型ツール
監査計画から実施、調書作成、フォローアップまで、内部監査の一連の業務に特化したツールです。操作がシンプルで、必要な機能が過不足なく揃っており、中堅企業や上場準備中の企業にも導入しやすい価格と設計になっています。
ツール選定では「機能の多さ」よりも、「自社の監査業務に本当に必要な機能を使いやすく備えているか」を重視することが大切です。
内部監査ツールの主要な機能
それぞれ内部監査ツールにより特徴はありますが、一般的に内部監査ツールの主要な機能は以下です。
監査計画の自動化
監査対象の選定、リスク評価、リソース配分、スケジュール作成などをツールを用いて自動で行うことが可能です。これにより、手作業による計画立案の負担が軽減され、効率的かつ客観的な監査計画の策定が可能になります。さらに、リスクへの迅速な対応やリソースの最適化が実現し、監査プロセス全体の透明性と精度が向上します。
データ分析と可視化
収集した大量のデータを統計や独自のアルゴリズムで分析し、不正やリスクを特定することが可能です。エクセルで処理しきれないような莫大なデータの突合や分析、分析結果をグラフやダッシュボードで視覚的に表示することで、複雑な情報を直感的に理解しやすくし、迅速な意思決定をサポートしてくれます。また、目検での見落としリスクの軽減にもつながります。
レポート作成
監査結果や分析データを自動的に取りまとめ、分かりやすい形式で出力することが可能です。これにより、監査プロセスの透明性が向上し、経営層や関係者への報告が効率的かつ正確に行うことが可能です。
リスク管理機能
企業内の潜在リスクを特定、評価、優先順位付けし、適切な対策を提案・追跡することが可能です。これにより、リアルタイムでリスクへの迅速な対応と継続的なモニタリングが可能になります。
内部監査ツールを選ぶ際のポイント
内部監査ツールを選定する際には、以下のポイントを選定する際の基準にするとよいでしょう。
1. 導入目的の明確化
まず、ツールを導入する目的を明確にしましょう。例えば、リスク管理の強化、コンプライアンス遵守の徹底、業務プロセスの効率化など。
2. 必要な機能の確認
色々なツールを見ていると、「こんな機能も欲しい…」などと目移りしていくことがありますが。多機能なもの、便利なものではなく、まずは目的が最も実現できるツールは何かという視点から、どのツールが最も適しているかを選定すると失敗は減るでしょう。
3. 操作性とユーザビリティ
ツールの操作が複雑だと現場での活用が進みません。選定者のリテラシーが高く、選定者が良いと思っても社内全体で見たときに使いこなせず不満がたまるということはよくあります。直感的な操作が可能で、ユーザーフレンドリーなインターフェースを持つツールを選ぶことが重要なため、複数属性の人で確認しましょう。
4. カスタマイズ性
業種や規模ごとに業務プロセスや監査項目は全く異なります。自社の業務に合わせたカスタマイズができるカスタマイズ性の高いツールを選びましょう。
5. 既存システムとの連携
既に導入しているシステムやソフトウェアとの連携やデータの引継ぎが可能かどうかも重要なポイントです。
6. セキュリティ
内部監査では機密情報を扱うため、ツールのセキュリティ性能は非常に重要です。データの暗号化やアクセス制限など、十分なセキュリティ対策が施されているか確認しましょう。
7. サポート体制
導入後のサポート体制も考慮すべきポイントです。トラブル発生時の対応や、操作方法の問い合わせに迅速に対応してくれるベンダーを選ぶと安心です。

内部監査ツール導入の流れ
監査の課題を洗い出す(監査のどの部分を効率化したいか?)
必要な機能を整理する(J-SOX対応、レポート自動化など)
複数のツールを比較する(デモや無料トライアルを活用)
社内の監査チームと協力して導入計画を立てる
トライアル運用し、改善点を反映する
おすすめの内部監査ツール5選の比較
以下に、内部監査に役立つおすすめのツールを紹介します。各ツールの特徴や機能を比較し、自社に最適なものを選定しましょう。
1.QAIVA(内部監査特化型ツール)
特徴
監査をコアビジネスにする株式会社ハイファイの開発しているBIツール。低価格で直感的な操作ができることが大きな特徴です。
メリット
低価格かつ、シンプルで使いやすいUIのBIツール。膨大な量のデータでもスムーズに取り込み、編集が可能で、レポートの作成も可能。また、企業の課題に合わせてハイファイの内部監査コンサルタントがテンプレートの作成を行っているため、自社の細かい用途に沿った利用ができます。
デメリット
デフォルトのテンプレートがない。テンプレートの作成は可能ですが、ツールの担当サポートと共に利用用途に合わせたカスタマイズが必要です。
適した企業
企業規模にかかわらず、BIツールを監査でどのように活用するか悩んでいる企業に最適です。また、監査業務に対するフォローも委託でき、監査周りに対する網羅性が高いため、悩んでいたらとりあえず相談してみる。というのがおすすめです。
URL
2.SAPAudit Management
特徴
SAPエコシステムとシームレスに統合できる、大企業向けの監査ソリューションです。
メリット
他のSAP製品との連携が容易で、包括的な監査機能を提供します。
デメリット
導入と運用に高コストが伴い、中小企業には不向きな場合があります。
適した企業
SAPを既に導入しているか、SAPのその他製品と親和性が高い大企業に最適です。
URL
https://www.sap.com/japan/products/financial-management/audit-management.html
3.TeamMate+ Audit
特徴
監査計画から報告までのプロセスを一元管理できるツールです。
メリット
包括的な機能セットと信頼性の高いサポートを提供します。
デメリット
初期設定やカスタマイズに時間と労力を要する場合があります。
適した企業
中堅から大企業、特に金融機関や公共機関に適しています。
URL
https://www.wolterskluwer.com/ja-jp/solutions/teammate/teammate-audit
4.Pentana Audit
特徴
リスク評価とコントロールの可視化を提供する監査管理ツールです。
メリット
直感的なインターフェースと効率的な報告機能を備えています。
デメリット
組織構造が複雑な場合、設定や運用が難しいことがあります。
適した企業
成長中の中小企業や多国籍企業に適しています。
URL
5.MetricStream Audit Management
特徴
ガバナンス、リスク、コンプライアンスを統合的に管理するプラットフォームです。
メリット
柔軟なカスタマイズ性と広範な機能を提供します。
デメリット
システムの複雑さから、導入に専門知識と時間が必要です。
適した企業
大企業、特に規制の厳しい業界(金融、医療など)に適しています。
URL
内部監査ツールを利用するメリット
1. 業務効率化
監査プロセスを自動化することで、人的リソースを削減し、迅速な監査が可能になります。
「エクセル管理で十分なのでは?」という声も多いですが、下記に内部監査ツールを導入する優位性を表にまとめています。
項目 | エクセル管理 | 内部監査ツール |
作業負担 | 高い(手作業) | 低い(自動化) |
データ管理 | バラバラで管理が煩雑 | クラウドで一元管理 |
監査証跡 | 手動で記録が必要 | 自動で記録・追跡 |
2. 精度の向上
データ分析や異常検知機能を活用することで、人的ミスを最小限に抑えられます。
3. コスト削減
業務効率化により、監査コストを削減し、より多くのリソースを戦略的な課題に振り分けられます。
4. リスク管理の強化
リアルタイムでリスクを検出・管理できるため、早期対策が可能になります。
内部監査ツールを利用するデメリット
1. 初期コストの負担
ツールの導入には高額な費用がかかる場合があります。
2. 運用スキルの必要性
ツールを適切に利用するには、専用のトレーニングが必要な場合があります。
3. 既存システムとの互換性
一部のツールは既存システムとの統合が難しい場合があります。
内部監査ツール導入のポイント
ベンダー選び: サポート体制が充実しているベンダーを選ぶ。
パイロット運用: 全社導入前に一部の部署で試験運用を行う。
カスタマイズ性の確認: 自社の業務フローに合わせて調整できるか確認。
従業員の教育: ツールを最大限活用するためのトレーニングを実施する。
内部監査ツール導入の成功事例
成功事例 1:製造業(J-SOX対応)
課題:エクセル管理の限界、手作業が多く、監査の効率が悪かった
導入ツール:Aツール(J-SOX対応)
結果:監査時間が40%削減、監査報告書作成の時間も短縮
成功事例 2:IT企業(リモート監査対応)
課題:監査チームがリモートで働くため、データの一元管理が難しかった
導入ツール:Bツール(クラウド型)
結果:遠隔でもリアルタイムで監査データを共有でき、監査の正確性が向上
まとめ
内部監査ツールの導入は、業務効率化、リスク管理の強化、コンプライアンスの向上に大きく寄与します。ただし、自社の業務に合ったツールを選び、適切な運用体制を整えることが成功の鍵です。本記事で紹介した選び方やおすすめツールを参考に、最適なツールを導入してください