内部監査の費用相場から削減ポイントまで組織規模別、業界別に徹底解説。
- 敏行 鎌田
- 2月27日
- 読了時間: 8分
内部監査は、企業の業務プロセスやリスク管理、法令遵守の状況を評価し、組織の健全性と効率性を確保するための重要な活動です。しかし、その実施には様々な費用がかかってしまいます。本記事では、内部監査に関連する費用の種類や相場、費用削減のポイントについて詳しく解説します。
目次
内部監査にかかる主な費用の種類
人件費
内部監査のトレーニングや資格取得支援費用
内部監査における外部専門家の活動費用
内部監査システム導入/維持費用
関連資料・文献の購入費用
内部監査費用の相場
会社法監査の監査報酬
内部統制対応コスト
内部監査費用の投資対効果
リスクの早期発見と対応
業務効率の向上
法令遵守と企業価値の向上
内部監査費用削減のポイント
リスクベースのアプローチ
テクノロジーの活用
外部リソースの適切な活用
継続的なトレーニング
適切な監査計画の策定
内部監査費用の重要性を再認識する
企業価値の向上
競争力の強化
従業員満足度の向上
内部監査にかかる主な費用の種類
内部監査に関連する費用は、多岐にわたりますが、主な種類としては以下です。
1. 人件費
当たり前の話ですが、内部監査を担当するスタッフの費用です。監査の専門知識とスキルを持つ人材を確保するため、適切な報酬が必要となります。特に、経験豊富な監査人材の確保は、質の高い監査を実施する上で不可欠となります。
2. 内部監査のトレーニングや資格取得支援費用
監査スタッフのスキル向上や最新の監査手法の習得のための研修費用です。定期的なトレーニングは、監査の質を維持・向上させるために重要です。例えば、公認内部監査人(CIA)の資格取得には、登録料や受験料が必要となります。IIA個人会員の場合、登録料は12,000円、各パートの受験料は31,000円が必要となります。
3. 内部監査における外部専門家の活用費用
社内の人手不足や、特定の分野で専門知識が必要な場合、外部のコンサルタントや専門家を雇用する必要があります。これにより、費用は発生しますが、内部リソースでは対応しきれない領域の監査を効果的に実施できます。
4. 内部監査システム導入/維持費用
監査ソフトウェア(GRCツール等)やデータ分析ツールの導入/維持にかかる費用です。これらのツールは、監査業務の効率化や精度向上に寄与するため、重要な項目になります。
5. 関連資料・文献の購入費用
最新の監査基準や業界動向を把握するための資料や文献の購入費用です。これにより、監査スタッフは常に最新の情報を基に業務を遂行することができます。

内部監査費用の相場
内部監査の費用は、企業の規模や業種、監査の範囲によってまちまちですが、一般的な相場は以下です。
1. 会社法監査の監査報酬
非上場企業における会社法監査の平均的な監査報酬は、売上高に応じて以下のようになります。
売上高10億円以上50億円未満: 平均約619万円(監査時間:約501時間)
売上高50億円以上100億円未満: 平均約778万円(監査時間:約632時間)
売上高100億円以上500億円未満: 平均約1,194万円(監査時間:約965時間)
企業の規模や地域、業種によっても大きく変動しますので、あくまでご参考までにお考え下さい。

2. 内部統制対応コスト
金融商品取引法に基づく内部統制対応にかかる費用も企業規模や業種、監査の範囲によって大きく異なりますが、全体平均では、前年度で約9,280万円、本番年度で約6,400万円と推定されています。特に、売上高100億円未満の企業では、売上高に対する負担割合が大きくなる傾向があります。
3.内部監査と外部監査の費用比較
内部監査と外部監査では、目的や実施方法、コストのかかり方が大きく異なります。特に、企業の規模によって監査の必要性や負担も変わってくるため、下記はそれぞれのケースに合わせた比較になります。
(1)比較の前提
対象企業:上場企業、中堅企業(資本金1億円以上)、中小企業(資本金1億円未満)
外部監査:主に公認会計士や監査法人が実施する監査
内部監査:企業内部の監査部門や管理部門が実施する監査
(2)外部監査と内部監査の費用比較(企業規模別)
項目 | 上場企業(大企業) | 中堅企業(非上場) | 中小企業(小規模) |
内部監査の費用 | 500万円~2000万円/年 | 100万円~500万円/年 | 50万円~200万円/年 |
外部監査の費用 | 1000万円~5000万円/年 | 300万円~1000万円/年 | 100万円~500万円/年 |
内部監査の主な目的 | 内部統制の強化・J-SOX対応・リスク管理 | 業務改善・コンプライアンス強化 | 経費管理・法令遵守チェック |
外部監査の主な目的 | 財務諸表の適正性確認・投資家向け透明性確保 | 企業価値向上・金融機関からの信頼確保 | 金融機関向けの信用向上・資金調達の円滑化 |
実施頻度 | 年間を通じて継続実施 | 必要に応じて実施 | 必要に応じて実施(少数回) |
担当者 | 監査専門チーム(社内監査部門) | 経理・総務が兼任 | 代表者・管理者が兼任 |
(3)企業規模別の監査の特徴
🔹 上場企業(大企業)
内部監査が義務化されており、J-SOX(金融商品取引法に基づく内部統制報告制度)対応が必須。
外部監査は、四半期・半期・年度ごとに監査法人による財務報告監査を受ける必要がある。
費用は高額になるが、投資家や金融機関との信頼関係維持のために不可欠。
🔹 中堅企業(非上場)
法的義務はないが、取引先・金融機関からの信用を得るために監査を実施するケースが多い。
内部監査は主に業務改善や不正防止が目的で、必要に応じて外部監査も活用。
コスト削減のために部分的な外部監査を依頼する企業が多い。
🔹 中小企業(小規模)
内部監査を行わない企業も多いが、経理や総務が簡易的な監査を兼任することが一般的。
金融機関からの融資を受ける際に、外部監査を依頼するケースが増えている。
外部監査の費用は大企業と比較して安価だが、それでも負担になることが多い。
(4)企業ごとの監査費用の最適化ポイント
大企業の場合:内部監査部門を強化し、外部監査との連携を最適化する。
中堅企業の場合:外部監査の頻度を調整し、必要な範囲に限定してコストを抑える。
中小企業の場合:内部監査を簡易的に実施し、外部監査は必要なタイミングでスポット依頼する。
内部監査費用の投資対効果
内部監査にかかる費用は決して小さくありませんが、その投資対効果を考慮することが重要です。
1. リスクの早期発見と対応
内部監査を通じて、業務上のリスクや不正の兆候を早期に発見し、適切な対応を取ることで、大きな損失を未然に防ぐことができます。
2. 業務効率の向上
監査を通じて業務プロセスの無駄や非効率を洗い出し、改善提案を行うことで、業務全体の効率化とコスト削減が期待できます。
3. 法令遵守と企業価値の向上
法令遵守の状況を定期的にチェックし、コンプライアンス違反を防ぐことで、企業の信頼性と価値を維持・向上させることができます。
内部監査費用削減のポイント
内部監査の費用を効果的に管理・削減するためのポイントを以下にまとめます。
1. リスクベースのアプローチ
全ての業務を均等に監査するのではなく、リスクの高い領域に重点を置くことで、効率的な監査を実施し、コストを抑えることができます。
2. テクノロジーの活用
データ分析ツールや監査ソフトウェアを導入することで、監査プロセスを効率化し、人件費や作業時間を削減できます。AIを活用した異常検知や自動化ツールは、コスト削減の大きな助けとなります。
3. 外部リソースの適切な活用
外部の監査専門家やコンサルタントを必要な範囲で活用することで、自社リソースの負担を軽減しつつ、専門知識を最大限に活用できます。ただし、全面的に外注するとコストがかさむため、内部リソースと外部リソースを適切に組み合わせることが重要です。
4. 継続的なトレーニング
監査スタッフのスキルアップに投資することで、内部で解決できる業務範囲を広げ、外部依存を減らします。資格取得支援や内部トレーニングプログラムは、中長期的に見て費用対効果が高い取り組みです。
5. 適切な監査計画の策定
監査計画を事前に詳細に策定し、無駄を削減します。監査の目的、範囲、スケジュールを明確にすることで、監査チームの効率的な運用が可能になります。
内部監査費用の重要性を再認識する
内部監査費用は単なるコストではなく、リスク軽減や効率向上、法令遵守などの観点で組織全体に利益をもたらす投資です。費用を削減するだけではなく、戦略的に活用することで、以下のような効果を得ることができます。
1. 企業価値の向上
内部監査を適切に行うことで、ガバナンスの向上や法令遵守の強化が図られ、外部からの信頼を得ることができます。これは、株主や投資家に対する安心材料ともなり、企業価値を高める要因となります。
2. 競争力の強化
内部監査を通じて業務の効率性を高めることで、コスト削減や生産性向上が実現します。これにより、競合他社に対して優位性を持つことが可能になります。
3. 従業員満足度の向上
内部監査によって明確な業務プロセスやコンプライアンスが整備されると、従業員が安心して業務に取り組める環境が整います。これが結果的に従業員の満足度向上につながります。
内部監査費用の計画的な管理を始めよう
内部監査は、企業経営における重要な柱であり、その費用を正しく管理することは、組織の健全な運営に直結します。費用を抑えるだけでなく、リスク管理や業務効率化の効果を最大限に引き出すことが、内部監査の本来の目的です。
リスクの高い領域に焦点を当てるリスクベース監査や
最新技術を駆使した効率化、
外部と内部のリソースを組み合わせた柔軟な体制を整備することで、費用対効果の高い内部監査を実現できます。
費用を投資と捉え、適切なコントロールを行うことで、長期的な視点での企業価値向上を目指しましょう。







