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ウォークスルーとは?内部監査の中核手法を実務目線で解説

内部監査で「ウォークスルーって何?」という問いは頻出です。ウォークスルーは、選んだ取引を起点から帳簿反映まで実際にたどり、設計された統制が“どこで・誰に・どの証憑で”効いているかを確かめる中核手法です。


ウォークスルーとは?定義と概要

ウォークスルーは、業務プロセス全体を代表的な取引で追跡し、①プロセス理解、②統制設計の有効性確認、③重要リスクの把握を同時に行う評価手法です。具体的には、証憑突合、ヒアリング・観察、必要に応じた再実行(リパフォーマンス)を組み合わせ、起票→承認→記録→月次/決算反映までを一気通貫で検証します。


なぜ内部監査で重要か

  • プロセス理解が早い:上流から下流までの“実態の流れ”を短時間で把握。

  • リスクの当たり所が分かる:重要判断点(承認、金額閾値、マスタ変更など)が浮き上がる。

  • 設計評価の要:整備状況(デザイン)評価の中心手続で、運用評価の前提。


ウォークスルーで確認すべき“3点セット”

  1. フローチャート:開始・決定・分岐・入出力を記号化。例外経路も記載。レーン(部門・役割)で責任を明確に。

  2. 業務記述書(ナラティブ):目的、範囲、役割、使用システム、主活動、入出力、例外、関連規程を文章で整理。

  3. RCM:財務アサーション(完全性、正確性、適時性、実在性、権利義務など)に対し、主要リスク・統制・証憑・頻度・責任者・テスト手続を対応付け。

ウォークスルーで確認すべき“3点セット”

RCMの簡易テンプレ(例)

アサーション

主なリスク

キー統制(頻度/責任)

主な証憑/ログ

テスト手続(概要)

完全性

計上漏れ

伝票は起票者≠承認者、連番管理(毎日/課長)

伝票台帳、承認ログ

連番照合、欠番追跡

正確性

金額誤り

マスタ参照+自動計算(都度/システム)

取引明細、マスタ更新履歴

再計算、マスタ差分確認

期末計上

期間帰属の誤り

受領/出荷基準で自動計上(毎月/経理)

入出庫ログ、検収書

カットオフ突合


ウォークスルーの実施手順(実務フロー)

範囲設定:重要勘定・金額規模・複雑性・不正可能性から対象を選定。関連アサーションを明確化。②ドキュメント整備:3点セットを作成/更新。既存資料は“現場の実態に合っているか”を最初に検証。③取引の選定:通常に加え、閾値超過、例外経路、手動調整など“リスクが動く”ケースを1~3件。④歩行追跡(トレーシング):起票から原始証憑、承認、システム記録、仕訳、総勘定元帳、試算表まで連続突合。画面や帳票はスクリーンショットに時刻と取得者を付記。⑤現場確認:担当者ヒアリングと作業観察を組み合わせ、実在する統制か確認。口頭説明のみは不可、必ずエビデンスで裏付け。⑥ギャップ整理:設計不足(統制が無い/弱い)、運用不備(守られていない)、証跡不備(残らない)に分類。重要性評価(影響×発生可能性)と是正案(暫定/恒久)を提示。⑦結論と文書化:対象・方法・結果・一次証跡の所在・残課題・改善期限を記録し、再現性を担保。


他手法との違い・使い分け

  • ウォークスルー:少数取引で設計の妥当性とプロセス理解を得る。結論は“設計が意図どおりか”まで。

  • サンプリングテスト(運用評価):母集団から抽出し、期中を通じた運用有効性を検証。結論は“統制が期間を通じて機能したか”。

  • 使い分け:年度早期はウォークスルーで設計を固め、是正後に運用評価へ。異常傾向が強い場合は追加サンプルや代替的分析を検討。


最新手法との連携:プロセスマイニング

イベントログ(例:伝票ID、担当、タイムスタンプ)で実態フローを全件可視化。活用ポイント

  • 前工程:バリアント(流れの種類)を把握し、代表/例外を対象に選定。

  • 実施中:承認スキップや手戻りの“その場”で該当ログを提示し、原因(権限、設定、教育)を特定。

  • 後工程:逸脱率、リードタイム、ボトルネックを全件で定量化し、サンプル依存の見落としを補完。


実務のコツ(チェックリスト)

  • 3点セットは“責任者・頻度・証跡”が一目で分かるよう連動させる。

  • 画面/帳票の保存はファイル名ルールで統一(例:2025-04-15_AP_承認ログ_取引12345)。

  • 口頭説明のみで“有効”としない。証憑と操作ログで裏付ける。

  • 改善提案は“影響×コスト”で優先度付け。暫定(手続追加)と恒久(設定変更/自動化)を分ける。


まとめ―実務への活かし方

3点セットを最新化し、プロセスマイニング等のデータ手法で視野を広げれば、設計の妥当性確認から運用の実効性検証、継続的な改善までをつなげられます。まずは重要プロセスで小さく始め、エビデンスの取り方と文書化の型をチーム標準として定着させましょう。

内部リンクの提案

  • 内部統制の基本:J-SOXの目的、評価範囲、整備/運用評価の流れを解説した入門記事

  • サンプリングテストとの違い:運用評価でのサンプル設計、例外処理、結論の出し方を詳説

  • プロセスマイニング入門:導入手順、ログ要件、典型KPI(バリアント数/逸脱率/リードタイム)を紹介

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