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内部監査におけるトーンアットザトップ(Tone at the Top)とは?定義やIIAに置けつ位置づけや、活用方法まで徹底解説

目次

  1. Tone at the Topとは?定義と起源(IIA・COSO)

  2. Domain III(IIA 2024改訂)におけるTone at the Topの位置付け

  3. 監査品質への影響:定性・定量による評価法

  4. プロフェッショナル・スケプティシズムとの相乗効果

  5. KPIとサーベイを活用したToneモニタリング手法

  6. 内部監査人向け評価プロセスとチェックリスト

  7. 制度設計:教育・報酬・ガバナンスでToneを定着

  8. 事例分析:国内外の成功/失敗ケース

  9. 実践ロードマップ:内部監査と連携したTone強化


Tone at the Topとは?定義と起源(IIA・COSO)

「Tone at the Top(トーン・アット・ザ・トップ)」は、COSOフレームワークで示される内部統制の「統制環境」を構成する最も重要な要素の一つであり、IIA(内部監査人協会)でも組織の倫理や専門性の土台として位置付けられています。

特にCOSO2013年版では、経営層やトップマネジメントの価値観や姿勢、そしてその行動が、組織全体の文化やリスク管理のあり方に強く影響するという点が明確にされ、トップの姿勢や意識が内部統制の有効性を大きく左右することが再定義されました。


Domain III(IIA 2024改訂)におけるTone at the Topの位置付け

2024年に改訂されたIIA(内部監査人協会)国際基準では、「Domain III(Governing the Internal Audit Function)」の中で、Tone at the Topの重要性がこれまで以上に強調されています。

特に原則6〜8では、経営層や取締役会とCAE(最高監査責任者)の間で、内部監査部門の権限・独立性・監督責任を明確に定めることが要件となり、組織の上層部が内部監査機能の有効性を保証するための積極的な関与(エッセンシャル・コンディション)が国際基準上も必須事項として明文化されました(参考:theiia.org, kpmg.com)。

この改訂により、トップマネジメントや取締役会が内部監査部門に対し十分なリソース・独立性・情報アクセスを確保し、その活動を監督・評価する責任が、より具体的かつ厳格に求められるようになっています。


監査品質への影響:定性・定量による評価法

経営層の姿勢、すなわち「Tone at the Top」がしっかりしている組織では、内部監査人が不正を見抜く力やリスクを的確に評価する力が高まることが、さまざまな研究で明らかになっています。

たとえばRuhnke & Schmidt(2017)やWang & Fargher(2017)といった実証研究では、「経営層がガバナンスや倫理観を強く示し、内部監査部門を積極的にサポートする場合、監査人自身のモチベーションや専門的懐疑心が高まり、不正リスクの早期発見や質の高い監査判断につながる」という傾向が、統計的な分析によって裏付けられています(参考:researchgate.net)。

要するに、経営層が本気でコンプライアンスや内部統制の重要性を発信・行動しているかどうかが、現場の内部監査人のパフォーマンスや不正検出の実効性に直結している、ということです。


プロフェッショナル・スケプティシズムとの相乗効果

インドネシアで202名の内部監査人を対象に行われた調査によると、監査人が高いプロフェッショナル・スケプティシズム(専門的懐疑心)を持っている場合、不正を見抜く力が明確に高まることが統計的に示されています。一方で、「Tone at the Top」(経営層の姿勢)が直接的に個々の監査人の不正判断力に影響を与える、という因果関係は必ずしも認められませんでした。しかし、その一方で、理想的な職場環境や組織文化を築くうえでは、経営層が示すTone at the Topがやはり非常に重要な基盤になる、という結論が出ています(参考:iacademicresearch.org, researchgate.net, cmr-journal.org)。

さらに、Carpenter & Reimers(2009)の実証研究では、「経営層が高い倫理観やガバナンス意識を明確に示すことで、監査人の専門的懐疑心が実際の行動としてより発揮されやすくなる」という結果が得られており、経営層のToneが間接的に監査品質を押し上げる役割を持っていることが裏付けられています(参考:cmr-journal.org)。


KPIとサーベイを活用したToneモニタリング手法

経営層の姿勢(Tone at the Top)が実際に組織にどの程度浸透しているか、つまり“Tone”の効果や現状を客観的に把握するためには、インシデント(事故・不正等)の発生件数や匿名通報の件数、経営層のリーダーシップやガバナンス姿勢について従業員がどう感じているかを測る意識調査(特に経営層の評価スコアを含むもの)、さらに現場からの不正疑義の提起件数や経営判断への異議・正当な挑戦がどれだけ行われているか、など複数の定量・定性的な指標を総合的に分析することが重要であり、COSOやIIAもこうした「見える化」の仕組みの構築を強く推奨しています。

経営層の姿勢の浸透度

内部監査人向け評価プロセスとチェックリスト

内部監査人が「Tone at the Top」を的確に評価するためには、単に財務データや帳簿を確認するだけでは不十分です。経営層へのインタビューや、取締役会・監査委員会の議事録などの非定型情報を積極的に分析し、組織の統制環境やガバナンス文化が実際にどのように機能しているかを多角的に評価することが求められます。

2024年のIIA国際基準(Domain III)や各種グローバル実務ガイダンス(KPMG、Wolters Kluwer等)では、以下の観点を特に重視することが明確に示されています。


【内部監査人が確認すべき主要ポイント】

  1. 内部監査チャーター(Charter)の適切性

    内部監査部門の権限や独立性、職務範囲が明確に文書化され、かつ定期的に経営層・取締役会の承認を受けているかを確認します。→ チャーターが現場実態と乖離していないか、最新化されているか。

  2. CAE(最高監査責任者)の独立性と報告体制

    CAEが取締役会・監査委員会と直接かつ独立してコミュニケーションできる仕組みが整備されているか。→ CAEの任免・評価プロセスにおいて経営層や役員会の関与が適切か、業務上の干渉がないか。

  3. CAEとボード(取締役会・監査委員会)間の定期的なコミュニケーション

    監査部門とガバナンス層の間で、四半期ごと等、計画的かつ継続的な意見交換やリスク共有が実施されているか。→ 重大な監査結果・リスク事象は即時報告されているか。

  4. 監査計画および予算承認プロセス

    内部監査の年間計画や必要な予算・人員リソースについて、経営層やボードが適切に関与・承認し、実行上の障害がないかを確認します。→ 監査計画の独立性・実効性が脅かされていないか。


制度設計:教育・報酬・ガバナンスでToneを定着

Toneを制度化するには、

  1. 経営層およびCAEへの倫理/Risk Management教育

  2. ボーナス・報酬体系にガバナンスKPI(例:通報件数、監査推進案件)

  3. ボード内に独立監査委員会を設置

  4. 年次でToneレビュー報告を行う

これはCOSOやUNPRI等も提言する先進的手法です。


事例分析:国内外の成功/失敗ケース

  • Enron事件:トップの倫理崩壊が全社不正を助長。

  • 国内某企業のガバナンス再建:経営トップの明確なTone設定と監査委員会設置により、内部統制が再強化。

  • 海外先進企業:経営層のスケプティシズム研修実施により、監査品質スコアが向上した実績あり。


実践ロードマップ:内部監査と連携したTone強化

ステップ

内容

1. 分析

現状Tone評価(意識調査+KPI)

2. 設計

Charter改訂、制度・報酬設計

3. 実行

教育研修、監査人評価ツール導入

4. モニタリング

KPI・報告頻度の確立

5. 改善

年次レビュー、改善計画実施

まとめ

本稿では、最新のIIA基準・COSOと連携してTone at the Topを分析しました。制度・指標・教育を通じて、経営層の姿勢を内部監査活動とリンクさせることで、組織全体のリスク対応力と監査品質の向上を実現します。さらに個別項目(チェックリスト、アンケート設問例等)の詳細が必要であれば、お気軽にご依頼ください。

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