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往査の外注先はどう選ぶ?内部監査のアウトソーシング・コソーシングの基礎知識とおすすめ企業を紹介

  • 4月21日
  • 読了時間: 11分

往査の外注ニーズが急増している背景

内部監査の「往査」、被監査部門の現地に赴いて行う監査を外部に委託する企業が増えています。

その背景にあるのは、内部監査人材の慢性的な不足です。内部監査の求人数は過去10年で約6倍に増加する一方、経験者の供給は追いついていません。特に少人数の内部監査部門では、年間の監査計画をこなすだけでもリソースが逼迫し、全国の拠点や海外子会社への往査まで手が回らないという課題を抱える企業が多くあります。

さらに、2024年のJ-SOX改訂により不正リスク対応が強化され、企業のガバナンス・コンプライアンスに対する社会的要請も年々高まっています。こうした環境の中で、往査を含む内部監査業務の一部または全部を外部の専門家に委託する「アウトソーシング」や「コソーシング」が、現実的かつ戦略的な選択肢として注目されています。

本記事では、往査の外注を検討している方に向けて、外注の形態(アウトソーシングとコソーシングの違い)、外注先の選び方のポイント、おすすめの外注先企業、そして外注する際の注意点までをわかりやすく解説します。


往査を外注する2つの形態とは?アウトソーシングとコソーシング

往査を含む内部監査業務の外注には、大きく分けて「アウトソーシング」と「コソーシング」の2つの形態があります。自社の状況に合わせて適切な形態を選ぶことが、外注成功の第一歩です。


アウトソーシング(完全委託)

監査計画の策定から往査の実施、監査調書の作成、報告書の作成、フォローアップまで、内部監査業務の全部または大部分を外部の専門家に委託する形態です。

自社に内部監査の専任担当者がいない場合や、IPO準備中で内部監査体制をゼロから構築する必要がある場合に選ばれることが多い方式です。専門家がすべてを代行するため、社内のリソース負荷を最小限に抑えられます。

ただし、すべてを外部に任せてしまうと、社内にノウハウが蓄積されにくいというデメリットがあります。


コソーシング(共同実施)

自社の内部監査担当者と外部の専門家がチームを組み、共同で監査業務を実施する形態です。たとえば、監査計画の策定や報告は自社で行い、往査の実施や専門性の高いテーマの監査を外部に委託するといった使い方ができます。

コソーシングの最大のメリットは、外部の専門知識を活用しながら社内にもノウハウが蓄積される点です。外部の専門家と一緒に往査に同行することで、監査手法やヒアリング技術を実務を通じて学べます。将来的に内部監査の内製化を目指す企業にとっては、特に有効な形態です。


どちらを選ぶべきか

一般的には、内部監査機能を一から構築する段階ではアウトソーシング、既存の監査部門を強化・補完したい場合はコソーシングが適しているとされます。ただし、多くの外注先企業は両方の形態に対応しており、企業の成長段階や予算に応じて柔軟にプランを組むことが可能です。

なお、どちらの形態であっても「企画・分析機能は自社内に残す」ことが重要です。往査の実施作業を外注しても、監査の方針決定やリスク評価、経営層への報告といったコア機能は内部監査部門が主体的に担うべきとされています。


往査の外注先を選ぶ7つのポイント

外注先の選定は、往査の品質と成果を左右する最も重要な判断です。以下の7つのポイントを基準に比較・検討しましょう。


ポイント1:内部監査の専門資格と実務経験

外注先の代表者や担当コンサルタントがCIA(公認内部監査人)やCISA(公認情報システム監査人)などの専門資格を保有しているかを確認しましょう。会計監査の経験と内部監査の経験は異なるため、公認会計士であっても内部監査の実務経験が十分かどうかは別途精査が必要です。


ポイント2:対応範囲(国内・海外・リモート)

自社の拠点構成に合わせた対応力があるかを確認します。全国の支店・工場への往査対応、海外子会社への英語・現地語での監査対応、リモート監査とのハイブリッド運用など、必要なカバー範囲を事前に明確にしておきましょう。


ポイント3:業界・業種の理解

内部監査は業界特有のリスクやプロセスへの理解が求められます。自社と同じ業界での監査実績があるかどうかは、往査の質に直結するポイントです。


ポイント4:コソーシング対応の可否

将来的な内製化を見据えるなら、コソーシング方式に対応しているかを確認しましょう。往査の同行を通じたOJT型の知識移転ができる外注先は、長期的な投資効果が高いといえます。


ポイント5:費用体系の透明性

往査の費用は、監査テーマの難易度、拠点数、出張の有無(国内・海外)、所要日数によって大きく変動します。見積もりの内訳が明確で、追加費用の発生条件が事前に合意できる外注先を選びましょう。


ポイント6:報告書の品質

往査の成果物は監査報告書です。発見事項が「事実→基準→原因→影響→改善提案」の構造で論理的にまとめられているか、経営層が読んで理解・判断できるクオリティの報告書を作成できるかは、外注先の実力を測る重要な指標です。過去のサンプルを見せてもらうのが有効です。


ポイント7:コミュニケーションのしやすさ

往査は被監査部門との信頼関係が成果を左右します。外注先の担当者が「粗探し」ではなく「組織を良くするパートナー」として振る舞えるか、柔軟なコミュニケーションが取れるかも、選定時に面談で確認すべきポイントです。


往査の外注先 おすすめ企業8選

往査を含む内部監査のアウトソーシング・コソーシングに対応している企業を、BIG4系・独立系コンサル・中小専門ファームに分けて紹介します。


BIG4系ファーム

PwC Japan有限責任監査法人

グローバル内部監査のコソーシング・アウトソーシングを大規模に展開しています。「事前調査→監査計画→現地往査→監査報告」の標準プロセスを持ち、Japan Business Network(主要32カ国・約660人の日本人駐在員含む専門家ネットワーク)を活用した海外子会社往査に強みがあります。データ分析を積極活用し、往査前の定量的リスク把握から往査の実施、報告書作成まで一貫して支援します。大手上場企業や海外展開企業に適しています。


EY ストラテジー・アンド・コンサルティング

ベーシックな内部監査から経営監査、IT監査、不正調査まで幅広いテーマに対応するアウトソーシング・コソーシングサービスを提供しています。EYのグローバルネットワークを活用し、各地域の言語・文化・法令の違いを踏まえた海外拠点往査が可能です。特に会社法内部統制の監査支援や契約関連の監査に実績があります。


独立系コンサルティングファーム

株式会社ハイファイ

2015年設立の経営コンサルティングファームで、内部統制・リスクマネジメント・内部監査を主要事業領域としています。「Hi-Fi Intelligence for the Higher Financial Value」をコンセプトに、質の高い知見に基づくコンサルティングを提供しています。

三井不動産、三井不動産商業マネジメント、三井不動産リゾートマネジメントなどの大手不動産グループや、有限責任監査法人トーマツ、プロティビティジャパンといったBIG4・グローバルファームとの取引実績があり、大企業の内部統制・内部監査に関する実務知見が豊富です。少数精鋭の体制で、クライアントと共に経営課題の解決を進める「伴走型」のアプローチが特徴です。データ分析事業も展開しており、データドリブンな監査アプローチにも対応できます。

公式サイト:https://hifi.co.jp/


エイアイエムコンサルティング株式会社

内部監査・内部統制に特化したコンサルティングファームです。全国に専門家ネットワーク(「ビジコム研究会」)を持ち、北海道から沖縄まで全国の拠点往査に対応できるのが大きな特徴です。100を超えるチェック項目を活用した標準化された監査手法を持ち、往査の品質を一定水準に保つ仕組みが整っています。海外子会社への往査にも対応しており、中堅〜大手企業のJ-SOX対応・業務監査を数多く手がけています。


ブリッジコンサルティンググループ株式会社

内部監査・J-SOX・IPO支援に強みを持つ独立系コンサルティンググループです。豊富な実績に基づく効率的な業務運営により、正社員1人を雇用するよりも10〜30%のコスト抑制が可能としています。IPO準備企業の内部監査体制構築から上場後の高度化まで、成長ステージに合わせた柔軟なサービスを提供しています。内部監査の無料相談も実施しています。


OAGビジコム(OAGコンサルティンググループ)

内部監査のフルアウトソーシングからコソーシング、J-SOX対応、不正調査、子会社管理支援まで幅広いサービスを展開しています。IPO準備企業への内部統制構築支援や、全国拠点の往査対応、不正調査の専門チームによる特別監査にも対応可能です。3点セットの作成・更新支援や決算財務報告プロセスの評価支援など、J-SOX実務に強い実績があります。


森大輔公認会計士事務所

CIA資格を保有する公認会計士が運営する事務所で、内部監査のアウトソーシング・コソーシング・アドバイザリーの全形態に対応しています。海外拠点監査やリモートでの海外監査に対応できる数少ない個人事務所として、中堅企業のグローバル監査ニーズに応えています。IIA新基準に基づく内部監査の品質評価(外部評価)にも対応しており、既存の内部監査体制の改善提案を求める企業にも適しています。

その他の選択肢

GTM総合コンサルティング

公認会計士・ITコンサルタントのチームによる内部監査のアウトソーシング・コソーシングサービスを提供しています。内部監査の実効性を簡易的に診断する「内部監査診断ドック」というユニークなサービスも展開しており、まず現状を把握したいという企業の入口として活用しやすいサービスです。


往査を外注する際の注意点

注意点1:丸投げにしない

最も重要な注意点は、往査の実施を外注しても「企画・分析機能は自社内に残す」ことです。監査テーマの選定、リスク評価、経営層への報告、改善フォローアップの主導権は内部監査部門が持ち続けるべきです。外注先はあくまで「専門的な実行力を提供するパートナー」であり、内部監査の責任そのものを移転するものではありません。


注意点2:守秘義務の徹底

往査では企業の機密情報に触れることが多いため、外注先との間で守秘義務契約(NDA)を締結し、情報管理体制を事前に確認しておくことが必須です。特に海外子会社の往査では、個人情報保護法制(GDPRなど)への対応も考慮が必要です。


注意点3:被監査部門への説明

外部の専門家が往査に同行・実施する場合、被監査部門の理解と協力を得ることが重要です。「なぜ外部の人が来るのか」を事前に丁寧に説明し、往査の目的や外注先の役割を明確にしておくことで、現場の不安や抵抗感を軽減できます。


注意点4:外注先との役割分担の明確化

往査のどの工程を外注先が担当し、どの工程を自社が担当するかを、契約前に明確に合意しておきましょう。特に「発見事項の事実確認を被監査部門とすり合わせるのは誰か」「クロージングミーティングには自社の内部監査担当者も参加するか」といった実務的な役割分担を詰めておくことが、往査当日のスムーズな進行につながります。


注意点5:成果物の品質基準を事前に合意する

監査調書や報告書のフォーマット、発見事項の記載レベル、提出期限などを事前に合意し、品質基準を明確にしておきましょう。往査後に「期待していたアウトプットと違った」というミスマッチを防ぐために、初回の往査では特に綿密なすり合わせが必要です。


注意点6:コスト感覚を持つ

往査の外注費用は、テーマの難易度や拠点の遠隔度によって大きく異なります。国内拠点の往査で1回あたり数十万〜100万円程度、海外子会社への往査では航空券・宿泊費・通訳費を含めて1拠点あたり100万円以上になるケースもあります。正社員を1人雇用するよりも変動費として管理できるメリットがある一方、依頼頻度が多い場合はコスト比較を行う必要があります。


往査の外注を成功させるための3つの視点

視点1:短期的な「穴埋め」ではなく、中長期的な体制づくりとして捉える

往査の外注は「人が足りないから外に頼む」という消極的な手段ではなく、「外部の専門知識を取り入れて監査の質を高める」戦略的な手段です。コソーシング方式を活用すれば、外注しながら社内の監査力を高めることができます。


視点2:外注先を「業者」ではなく「パートナー」として扱う

往査の品質は、外注先との信頼関係に大きく左右されます。単なる発注者と受注者の関係ではなく、共に監査の品質向上を目指すパートナーとして関係を構築しましょう。定期的な振り返りや情報共有の場を設けることで、往査の精度は回を重ねるごとに向上します。


視点3:外注の効果を経営層に伝える

往査の外注は一定のコストが発生しますが、その投資効果を経営層に適切に伝えることが、継続的な予算確保と外注の定着につながります。「外注により発見されたリスクと改善効果」「内製だけでは対応できなかった拠点数」「監査品質の向上」などを具体的に報告し、経営判断に資する情報として整理しましょう。


まとめ

往査の外注先選びは、内部監査の質と実効性を左右する重要な経営判断です。

本記事のポイントを整理します。

往査の外注にはアウトソーシング(完全委託)とコソーシング(共同実施)の2形態があり、自社の成長段階やリソースに応じて使い分けることが重要です。外注先の選定では、専門資格・実務経験、対応範囲、業界理解、報告書品質、コミュニケーション力の7つのポイントを基準に比較しましょう。

BIG4系のPwCやEYはグローバル対応と大規模な組織力が強み、独立系のエイアイエムコンサルティングやブリッジコンサルティンググループは全国対応とコスト効率が強み、ハイファイのような少数精鋭ファームは伴走型の深い関与が強みと、それぞれ特徴が異なります。

外注する際は「丸投げにしない」「企画・分析機能は社内に残す」が鉄則です。往査の外注を単なるリソース補完ではなく、監査の質を高める戦略的手段として位置づけることで、内部監査部門の価値を経営に示すことができるでしょう。

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